日本版FITの問題点(2)
電力会社による発電事業者への各種いやがらせ
設備認定を受け、電力会社に申請書類を提出する事により、確かに買い取り価格は確定される。しかしながら、「全量買取制度」と言いながら、実際の発電所出力については、後から様々な理由(電圧変動やバンク逆潮流、総量規制等)をつけて減らされるのである。出資者としては、発電所出力の低減は、投資資金の回収期間に直接影響する訳だから、出力が確定するまでは投資できないであろう。
さらに追い打ちをかけるのが、不透明な系統連系工事負担金である。日本版FITでは、発電所と系統との連系線については、事業者の負担となっている。この金額が、電力会社や事業所によっても大幅に異なり、高圧連系で数千万、特高連系になると数億円を要求される例も珍しくない(1)。しかも工事の必要理由については、電力会社から一方的に通告され、事業者は黙って従うしかないようになっている。
電力保安通信の関係で過大な金額を要求される場合もある。電力では保安上、自社で専用線を張ったりしているが、インターネット回線を利用した安価な監視サービスを提供する会社も出てきており、これらのサービスが保安通信に利用できるよう検討して頂きたいと思う。
http://www.mki.co.jp/biz/solution/green/solar_power_monitoring/index.html
これらに加えて特に大型設備の建設が進まない原因としてアクセスラインの問題があり、これは事業者にとってオカネでは解決できない問題となっているので、これについて特に指摘しておきたい。
アクセスラインは誰が建設すべきか?
2MW以上のメガソーラーになると、特高での連系が必要となる。この電圧は電力会社や発電所の設置場所にもよるが、送電線近傍であれば66kVや、77kVで直接送電線に連系する。送電線から離れた地点であれば、送電線近傍に変電設備を「事業者側で」設置し、22kVや、33kVの特高配電線(電柱方式)で発電設備までのアクセスラインを「事業側で」建設する、というルールになっている。
私は以前、配電で仕事をしていた事があるが、事業者側でアクセスライン(特高配電線)を建設、保守するのは、ほぼ不可能と言って良い。つまり、日本版FITでは、送電線から離れた場所に2MW以上のメガソーラーや風力発電設備を建設する事は、物理的に不可能なのである。
この問題は、配電部門の人間には常識であるが、2MW以上の設備になると、電力会社の窓口が送電部門に変わるため、電力会社も十分に認識していないようである。その結果、電力会社から「連系可能」という回答が得られても、実際の発電所が建設できないという事態に陥るのである。
新規の発電事業者にしてみれば、電力の配電部門と送電部門にある壁など認識できるはずもないであろう(2)。
(1) 私の居た会社では、「負担金当てゲーム」というのが流行っていた。電力会社からの回答書が来ると、そこに書かれている負担金請求額をみんなで予想し、一番外れた人が全員(と言っても10人程だが)にコーヒーを奢るのである。
(2)電力会社の内部ではすでに、発電、送電、配電、は明確に分離されておりカルチャーも全く違う。部門間の人事交流は、ほぼ無いと言って良い。