理論とシミュレーションの関係

理論とシミュレーションの関係であるが、シミュレーションでないと扱えない領域というのが確かに存在すると思う。

1.方程式駆動型シミュレーション
基礎方程式が確立しているが、非線形とか、多体問題とか、複雑過ぎて人間では計算できない場合である。天体物理における銀河系の形成とか、プラズマ中の粒子の運動とかである。

光ファイバ中の光パルスについても、「非線形シュレディンガー方程式」というのが確立していて、それを「スプリット・ステップ・フーリエ法」というので計算すれば、かなりの精度で現象が再現できる。
http://www.asahi-net.or.jp/~ix6k-smur/Doctor.htm

実際、計算してみると、理論ではなかなか予測できなかった現象が再現できたりする。光ソリトンでも、分散マネージメントの最適値などは、シミュレーションでないと求めるのは困難であった。

2.アルゴリズム駆動型シミュレーション
巡回セールスマン問題とか、4色問題の解決とか、特定の問題に特定のアルゴリズムを適用して力任せに解を求める場合である。
http://www.infonet.co.jp/ueyama/ip/software/salesman.html
http://comp.cs.ehime-u.ac.jp/~ogata/fourcolor1.html

3.データ駆動型シミュレーション
データは多量に存在するが、基礎方程式がハッキリしない場合である。そこに何らかの「統計的法則」が隠れているかどうか検証する。 多変量解析とかで研究されていたと思うが、近年、システムトレードの流行で、株式やFXを対象とした研究が進んだ。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%9A%E5%A4%89%E9%87%8F%E8%A7%A3%E6%9E%90
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%BB%E6%88%90%E5%88%86%E5%88%86%E6%9E%90

相場の中に法則性を求める努力は、古来からなされてきた。古くは江戸時代、米相場におけるローソク足の考案、一目均衡表とか、各種テクニカル指標などである。最近では金融工学におけるブラックショールズ方程式などである。
http://homepage2.nifty.com/youtea/newpage10.htm
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%96%E3%83%A9%E3%83%83%E3%82%AF-%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%82%BA%E6%96%B9%E7%A8%8B%E5%BC%8F

これらは、ある面で本質を突いているのであるが、完全ではない。つまり定量的な評価が不十分である。BS方程式には、インプライドボラティリティーという参加者の心理状態や、ランダムウオークからのズレに依存する変数が出てくる。

で、結局、理論的な根拠は不明であるが、過去のデータに適用して、最も有効に機能するルールをシミュレーションで見つけよう、という事になるのである。この場合にも、カーブフィッティングとか、落とし穴は存在するが、基礎方程式を仮定しない分、定量的評価(検証)がなされている。

システムトレーダーのブログを見ても、収益は結構、不安定であり、株価変動はランダムに近いことがわかる。ただ僅かな規則性が隠れている事も事実であり、それを発見する事がトレーダーの仕事になるのである。
http://sys0trade.blog82.fc2.com/

ショールズ自身、何度か失敗しているように、相場の世界は、理論に対するシミュレーションの優位性が発揮できる分野の一つだと思う。科学の目的は、何らかの規則性(因果律)を発見する事であり、必ずしも基礎方程式にこだわる必要はないと考える。

http://en.wikipedia.org/wiki/Myron_Scholes
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9E%E3%82%A4%E3%83%AD%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%82%BA