所得移転と原子力の役割

原子力の必要性については、海外(資源国)への所得移転という点から考える必要があると思う。

日本の技術者が、苦労して原子力開発をしてきたのは、石油ショックの時に、産油国にオカネを吸い上げられた経験があったはずである。当時の日本は、まだ経済大国では無かったから、石油ショックは耐え難い苦痛であった。

それから30年が経過し、また原油価格の高騰と、産油国への資金の流れがおきている。岡崎義晴氏(ピクテ投信投資顧問社長)と松本大氏(マネックス証券CEO)の対談によると、現在、産油国に年間200兆円の所得移転が発生している。
http://www.monex.co.jp/AboutUs/00000000/guest/G800/new2008/news808w.htm
http://www.gci-klug.jp/crudeoil/2008/07/01/003175.php

これは、世界の金融資産の2%に達しており、今後の原油価格にもよるが、約50年で消費国の金融資産は吸い上げられる計算になる。従って、今後20年以内に実用化されないエネルギー技術については、結局、役に立たない可能性が高い。

日本は、硬直的な雇用制度から、変化への対応が難しいのであるが、核融合や、高速増殖炉開発から、もっと実用化の近いエネルギー技術に、人材と資金を移すべきである。太陽光を動力とした貨物船なども検討されているが、原子力船の復活や、バッテリーで走る漁船の開発なども考えるべきである。
http://www.47news.jp/CN/200808/CN2008082601000635.html

子供たちの世代の生活水準を考えると、日本は資源国への所得移転の抑制に集中すべきであり、原子力利用を妨げている法規制の問題なども、この点を考慮して速やかな対応が求められる。誰も破産したくはないのであるから。
http://www.nikkei.co.jp/news/main/20080624AT3S1701324062008.html